ドライブスルー調剤??

日曜日,琵琶湖畔の町を歩いていて,目に留まったものがありました.

 

「ドライブスルー調剤.お車に乗ったままで薬を受け取れます」

 

これはアウト,と思いました.

 

医薬分業が推進されてきた一番の理由に,多くの医療機関(特に診療所)では薬の説明が十分に行われていなかった,薬の専門家たる薬剤師もいない,という事実がありました.

薬は薬局で薬剤師さんに効果と副作用,飲み方の注意などを十分に説明を受けた上で薬を受け取り服用しましょう,ということだと思います.

 

本当に患者さんは十分な説明を受けているのか,薬局はただ薬を詰めて渡しているだけではないのか,という疑念が少し拡がりはじめています.

チェーン展開の薬局で薬剤師さんもパートの日替わり,患者さんの顔と名前も一致しない,なんていうのは本当に大丈夫なのでしょうか.

何となくの不信感が医者の側にも患者さんの側にもわきあがったりもしてきます.

 

そんな中,いくら便利でも「これはない」です.

クルマに乗ったままの患者さんにきちんと説明などできるわけがない!,ですし,

クルマに乗ったまま薬を受け取る時に,きちんと説明など聞くはずがない!,です.

 

患者さんにとって「便利」なことは,時に患者さんにとって「悪いこと」になります.

いくら面倒でも,急いでいても,聞いてもらわないといけないことはなんとしても時間をとって聞いてもらわなければなりません.

 

 

この薬局の発想はまさに営利を追求する企業の考え方であり,「他社との差別化」や「お客様の利便」といった言葉が経営戦略のキーワードになっているのでしょう.

人の健康にかかわっている,とか,医療の一翼を担っている,といった,公共の福祉の精神はみじんも感じられません.

 

 

これは薬のネット販売にも通じるものがあると思います.

インターネットのテレビ電話機能で薬剤師さんに説明を聞く(こともできる)から店頭の販売と同じ,なんて屁理屈としか思えません.

離島や僻地の人は困っている,とか,いかにもなことを声高に叫んで,揚げ句の果てになんたら審議会だかの政府の委員を辞任するとか言って脅してみたりして,表情の奥に「この儲けの口を手放してなるものか」感がぷんぷん匂っていました.(と思いませんか?)

このごろ.「既得権益がどうこう」言う人が一番その権益にしがみつくのに必死なのではないか,と思うようになりました.「ぶっこわし」たあと,自分がその権益を手に入れようとしている,ように思えてなりません.

それはさておき,本当にそれでいいのか,と薬剤師さんにもきいてみたいところです.

 

 

医療にも規制緩和の波が(半ば強引に)押し寄せています.

「企業の経営する病院」の恐さは「利益をあげること」が義務づけられるところです.企業の存在意義は利益をあげることであり,利益が上がらなければ倒産するのが企業です.

「お客様の利便」「他社との差別化」の経営戦略のもと,「お車に乗ったまま診察を受けられます」なんて時代にならないことを祈ります.