💛ジェネリック医薬品のこと💛

2006.5.16

 

 

   **下記記載は2006年時点のもので,2008年の改定で内容は変更になっています(2008.4月追記)**

 

     

 

 H18.4月から,病医院で発行する処方せんに,「後発医薬品への変更を許可する」という欄ができました.いわゆる,ジェネリック医薬品の使用を促進する目的です.

 テレビでは,加山雄三さんやら,高橋英樹さん,黒柳徹子さんやらがにこやかにコマーシャルしておられます.テレビの威力はさすがで,診察室で「ジェネリックってなんですの?」と尋ねられる方もちらほらでてまいりました.日本の医療/経済事情,皆保険性の維持,その他もろもろ事情はあるのだと思います.特に経済的な面についてはまるで勉強不足の私が自分の知識の中だけで発言するのは気が引ける面もあるのですが,医療の現場に携わる一医師の考えです,とお断りをした上で,今思うことを書いてみます.

 

 

私がジェネリック医薬品を使いたくない訳 その1 本当に同じ効き目?

 

 同じ成分同じ効き目です,とテレビや新聞はもちろん,医師向けの情報でも明言されています.それが本当なのかどうかについては,厳密には情報が乏しいと思います.薬は,効果を現す成分と,さまざまな添加物,場合によっては加工の工夫も加わって一つの薬としてできあがります.「成分が同じ」ならば「薬として同じ」と考えることにどうにも抵抗を覚えます.有効成分は同じでも添加物は各社さまざまに異なっているからです.

 直感的に言えば,同じカカオから作ったからチョコレートはどれも同じ,といわれて「???」と思うのと似ている気がします.加えた砂糖その他の成分や量,作り方にずいぶん工夫があるのではないかと思うからです.ジェネリック薬の添付文書(効能書き)に記されているのは,溶出試験(薬の溶ける早さ)と健康人に服用してもらった時の血液中の薬の濃度の動きくらいです.統計的な解析では同等(差はない)と判断されているはずです(そうでないとそもそも承認されたことがおかしい)が,見比べてみると各社に結構な差があるように思えます.

 それでも医者は一応理科系の人間ですので,「統計的に有意差なし」といわれればそれはそれで納得します.

 では実際の効果はどうなのでしょう.たとえば高血圧の薬ですと,その薬を服用してどれくらい血圧が下がったのか,何割の人に効果があったのか.効果の持続時間はどれくらいだったのか,その情報は手にすることができません.

 おそらくはそのデータはない(先発品と同じ成分なのだから当然同じはず,という理屈)のでしょうし,もしあったとしてもそれを簡単に教えていただける手だてはありません.そのことを次項に.

 

 

私がジェネリック医薬品を使いたくない訳 その2 情報提供は?

 

 製薬会社にはMR(Medical Representative:医薬情報担当者)さんがおられます.病院や診療所を訪問され,自社薬の効能や副作用,研究結果などの情報を提供いただきます.

 

 もちろん彼らは製薬会社の営業部門なのですが,他業種のいわゆる営業マンと異なるのは,副作用の発生情報など自社の不利益になるようなことも正確に伝えなくてはならないところです.また,世界中で行われている大規模な研究の結果を(仮に自社製品に有利な結果でなくても)いち早く伝えていただける,とてもありがたい方達でもあります.私は,医者になって以来一度もジェネリック医薬品会社のMRさんにお会いしたことはありません.宣伝や一般的な医療状況の情報提供はともかく,ないはずのない副作用情報も一度も聞いたことがありません.たとえば,ある系統の薬に共通の副作用が判明して添付文書が一斉に改訂になった時,その系統の薬を販売している製薬会社のMRさんは次々に来られてその説明をしていかれます.すこしずぼらなところでも最低限「改訂のお知らせ」なる書類を郵送してこられます.

 

 ところが,テレビでCMを流している各社も含めてジェネリック企業からは一切そういった情報提供はありません.同じ成分,同じ効き目だから副作用も同じ,先発品の会社から情報提供があればそれでいいじゃない,ということでしょうか.あるいは聞きたければいつでも教えてあげるからそっちから連絡して来なさい,ということでしょうか.そういうとても重要な部分を経費削減して,「半分の値段です」と言われても・・・

 

 

余談 医療ドラマのMRさん

 

 医療ドラマにでてくるMRさんの扱いはみていて悲しくなります.「ナースあおい」では村田雄浩さん演じるダメMRさんが予定外に空いてしまった特別室に入院させられたり,必要のない大腸カメラを受けさせられたりと,さんざんでした.今放送中の「医龍」では大学教授の接待ゴルフで教授が打つと同時に下っ端 MRさんがダッシュでボールを探しに行き,OBのボールをフェアウエイに投げて「セーフ,セーフ」なんて場面がありました.

 

 ちなみに,その回は肺ガンの新薬治験のうさんくささがテーマでした.効かない薬が担当医者の判断次第で夢の新薬にかわる,というのです.また,担当医がノルマを埋めるため治験に該当する患者さんを必死で探す,と言う場面もありました.見ていて「なるほどそんな事もあるかもしれない」と思ってしまう出来のよさ(悪さ?)でした.治験に関わったこともある私がそう思うのですから,一般の方々はなおさらだったでしょう.そもそも,「医者に接待ゴルフ」なんて今の時代に本当に存在するのでしょうか? 世間知らずの私が知らないだけでしょうか.

 

 少なくとも,治験で医者が個人的に「いい目を見る」「蓄財する」ことは私の知る限りありえません.銀行員が不正操作でお金をせしめると同じくらいの犯罪意識があればできなくはないかも知れませんけれども.いくらドラマとはいえ,普段プライドをもって働いているMRさんにとってはとても見ていられないものではなかったでしょうか.私は,世間話や医院経営の話より,自社の薬に精通していて効果,副作用,専門家の使い方など生き生きと話してくださるMRさんが好きです.他社薬についてもびっくりするくらい知識の深い方もおられます.そのまま医者をされても余程でなければバレないねぇ,なんて方も.医者にとっては日進月歩の医療について行くためにMRさんが大きな役割を果たしてくださっているのは間違いのない事実です.

 

 

私がジェネリック医薬品を使いたくない訳 その3 副作用は?

 

 前項その1,その2と大きく関連することですが,ジェネリック薬の副作用についての情報はお粗末に過ぎると感じます.

 

 添付文書(効能書き)をみると副作用の可能性が列挙してありますが,これは先発品(オリジナル)と同じです.先発品の添付文書にはその頻度が書かれていますが,ジェネリック薬には「頻度の調査は行われていない」と記載されています.すなわち,どんな副作用がでる可能性があるかについては先発品まかせ,ということです.なんたって「同じ成分」ですから.繰り返しになりますが,一つの薬が薬としてあるためには,薬効成分と添加物(錠剤として形を作るためや成分を安定させるため)が必要です.薬効成分は同じ/添加物は異なるという二つの品を同じものと考えるのはどうにも腑に落ちません.せめて市販後の副作用情報の収集を積極的に行っていただきたい,と願います.

 

 

私がジェネリック医薬品を使いたくない訳 その4 CMがキライ

 

 いよいよ,論理的でない感情論です.テレビで高橋英樹さんや黒柳徹子さんがにこやかに話しているのがイヤです.「あなたの薬が安くなるかもしれません」って,いかにも「本当は安いのに医者の利益のために高いものをつかまされているんですぜ」と言われているようで...(被害妄想でしょうか).私のところは 100%院外処方ですので,ジェネリックだろうが先発品だろうが当院への支払い額は変わりません.むしろ,この4月からジェネリックを使えば処方せん料が少しだけ高くなりました.

 

 調剤薬局からのキックバック(?)があるんでしょう?,と真顔で言われる方があります.50ヶ所くらいの薬局とお付き合いさせていただいておりますが,そんな(おいしい)話は一度たりとも頂いたことがありません.先日,毎日新聞の投稿欄にジェネリック関連の投稿があり,「(先発品を使えばメーカーから医師に対して)何らかの利益供与があるとも聞く」と書かれていました.どこで「聞かれた」のでしょう??.

 断言します,そんなものは全くまるっきり全然ありません!(あるなら是非おこぼれを頂戴したいくらいです).これは一種の(医者と製薬会社に対する)風評被害というものではなかろうかと,読んでいて憤然としてしまいました.テレビCMでジェネリックの存在を知らしめる,というのは,なんだか非常に商業的な戦略のように感じます.

 

 「いくら医者に使ってくれって言ったってらちが明かないぞ.何かいい作戦はないもんかね」

 「医者がダメなら患者の側からアプローチしたらどうでしょう.医者だって患者に頼まれたら断れないでしょう?」

 

 「それはいい,逆転の発想だな.早速CMを作ろう.とびっきりイメージの良いタレントを使ってな」

 ・・・なんてこともないでしょうが,そんな会議があったのではなかろうかと疑ってもみたくなるのです.当社は○○さんの社会活動を応援しています,って,それとジェネリックを使うこととあまり関係ないです.

 

 ラップや掃除機とかならそんな会社のものを買ってあげようかって気にもなるけれど,薬ですヨ.

 

 

私がジェネリック医薬品を使いたくない訳 その4 欧米では,という言い方がキライ

 

 さらにますます,論理的でない感情論です.よく使われるフレーズの,欧米では40%,50%がジェネリックです,というもの.これがなんとなくキライです.欧米の医療制度は日本と同様にさまざまな問題点を抱えています.なのに,アメリカではと言っとけば(アホな一般庶民は)納得するだろう,というニュアンスがキライです.今どき舶来至上主義というのもいかがなものでしょう.今,日本人は世界で一番長生きです.(医療経済的な問題を別にすれば)今まで通りのやり方で診療をして行くのが一番良さそうに思うのは変でしょうか.

 

 

私がジェネリック医薬品を使いたくない訳 最後に

 

 私は,特許が切れて低いコストで製造できるようになった薬を作ることには異議がありません.作った後の市販後調査がされなかったり,そのために有効患者の頻度や副作用の頻度がが本当に同等かがわからなかったり,ましてやそれらのことを伝えてくれる人の姿が見えなかったり,といったことがどうにも得心できないのです.開発費用がない訳ですから,これらのことを十分に行ってもなお安い薬ができるのではないでしょうか. 

 

     

 

    書き始めると長くなってしまいました.おつきあいありがとうございました.

 

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